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【人形づくりへの想い】「ひとのかたち」をつくるということ

どんな姿勢で取り組むか、どれだけ整った静かな心で触れるか。
手仕事だけでなく、あらゆることに通じる大切なことだと思います。今回は、あらためて「ひとのかたち」を作るということについて、私の想いと大切にしていることをお伝えさせて下さい。

お人形を作るとき、小物や衣類、ぬいぐるみなどを作る時とは明らかに違う感覚を抱きます。深い集中を要する、普段とは違う特別な感覚が研ぎ澄まされるような時間です。真新しい命の誕生を見るような、この世にひとつの個性を迎えるような、厳かな気持ちになります。

長い間いろいろと作り続けてきて確信しているのは、自分のその時の状態が出来上がりに反映されるということです。やむを得ず整わない状態で作業している時など、いくら注意していても、いつもはしないような間違いをしたり、糸が絡んだりするから不思議です。

それを肌で感じているので、お人形本体に取り組む時や、特に集中が必要な作業の前には、お風呂やお気に入りのアイテムで心身を清めて準備をします。これは、物心ついたころから自然に行っていた習慣でもあります。不要なものを落とし、クリアな状態の自分で祈るように素材と向き合っています。それは、「空」になる不思議な体感です。夕飯の献立を考えながらとか、明日の予定に思いを巡らせた状態でお人形を作るというのは、私にとってはかなり難しいことなのです。

お顔の基本的なバランス以外は、何も意図せずにお作りしています。「こんなお顔の子がいいな!」と思っても、その通りには仕上がりません。こんなふうにしよう、したいと思うほどに、何かちぐはぐな仕上がりになって行きます。これは技術云々の話ではなく、お人形一体一体の意志のようにも感じられます。「ひとのかたち」であるからこそ、作り手にもそれにふさわしい度量と姿勢が求められることを実感しています。

「あなたが作ったお人形をそばに置きたい」
私にとっては、最上級に嬉しいお客様の言葉です。

日々、書いて縫って何かしらつくっています。夢は、面白くて機嫌のいいおばあさんになること。

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